19 February.
犬が虫に刺された!虫刺されのような腫れがあるときの対処法
犬が虫に刺された時のチェックポイントから、お家でできる応急処置、さらには「虫刺されに見えるけれど実は怖い病気」まで、飼い主さんが知っておくべき情報を網羅して解説します。

「あれ?うちの子、なんだか顔がポコッと腫れている気がする……」
「さっきまで元気に走っていたのに、急に足を気にして舐め始めた」
愛犬の体にそんな異変を見つけたら、飼い主さんとしては気が気じゃないですよね。
人間なら「あ、蚊に刺されたな」で済むことでも、言葉を話せないワンちゃんだと「もしかして毒がある虫?」「放っておいて大丈夫?」と不安が尽きないものです。
実は、ワンちゃんの虫刺されには、数日で自然に治るものから、一刻を争う「アナフィラキシーショック」を伴うものまで、深刻度が天と地ほど違います。特に、散歩コースに草むらが多い場合や、夏場のお出かけなどは、常に危険と隣り合わせといっても過言ではありません。
この記事では、犬が虫に刺された時のチェックポイントから、お家でできる応急処置、さらには「虫刺されに見えるけれど実は怖い病気」まで、飼い主さんが知っておくべき情報を網羅して解説します。
犬の虫刺されでよくある症状とチェックポイント

まずは落ち着いて、愛犬の状態をじっくり観察しましょう。どこが、どのように、いつから腫れているのかを把握することが、獣医さんに状況を伝える際にも非常に役立ちます。
腫れ・赤み・しこりの見分け方
愛犬の皮膚にぽつんと赤みや腫れを見つけると、何に刺されたのか不安になりますよね。
こちらの「腫れ・赤み・しこりの見分け方」についても、それぞれの見た目の特徴、よくある部位、そして緊急性の違いがひと目でわかるように、すっきりと箇条書きに整理しました!
腫れ・赤み・しこりの見分け方
犬の「虫刺されのような症状」は、原因となる虫やアレルギー反応の程度によって見た目が大きく異なります。状態をよく観察して正しく見分けることが大切です。
局所的な赤み
- 特徴:蚊やノミに刺された直後によく見られる症状
- チェック方法:指で触ってみて、少し熱を持っているようなら炎症が起きているサイン
- 見つけやすいポイント:毛が薄いお腹周り、耳の内側、足の付け根など
じんましん
- 特徴:刺された場所以外にも、体中にポコポコとした「地図のような腫れ」が広がる状態
- 原因:特定の虫の毒や唾液に対する強いアレルギー反応の可能性が高い
- ※見た目のインパクトが強く飼い主さんも驚きやすい症状ですが、全身反応のため注意深く見守る必要があります。
硬いしこり
- 特徴:皮膚の中にコリコリとした塊がある状態
- 過度な心配がいらないケース:刺されてから数日経過し、皮膚が修復しようとして硬くなっている状態(肉芽腫など)
- 受診を勧めるケース:刺された覚えが全くないのに、「コリコリした塊」がいつまでも消えない場合
ワンちゃんの「行動」に出るサイン
言葉を話せないワンちゃんは、行動の変化や仕草で「痒み」や「痛み」を伝えてくれます。
強い痒みや違和感があるときのサイン
- 体の特定の場所をしきりに舐めたり、噛んだりしている
目や鼻の周りが痒いときのサイン
- 顔を地面やソファに激しくこすりつけるような仕草をする
鋭い痛みを感じたときのサイン
- 散歩中に突然「キャン!」と鳴いて足を浮かせる
- 突然その場から一歩も動かなくなる
こうした「行動の変化」を敏感に察知してあげることが、早期発見の鍵となります。
【犯人は誰?】虫の種類別の症状と特徴を徹底解説

どの虫が刺したのかが分かれば、対処法もわかります。
蚊:かゆみとフィラリアに注意
蚊に刺されると人間と同じように赤みや痒みが出ますが、それ以上に「フィラリア症」の媒介元になる点が最も危険です。
蚊に狙われやすいポイント
- 耳の縁(ふち)
- 鼻筋
- お腹周り
フィラリアのリスク
- 蚊が血を吸う際に、フィラリアの幼虫をワンちゃんの体内に媒介する
- 成長した虫が最終的に心臓や肺の血管に寄生し、命を奪う原因になります。
フィラリアの薬を飲んでいれば問題ありませんが、もし飲んでいない場合には早急に動物病院を受診し、獣医師に相談してください。
ハチ:急激な腫れと激痛
アシナガバチやスズメバチに刺されると、強烈な痛みとともに急激な症状が現れます。過去の経験の有無によって危険度が大きく跳ね上がるため、厳重な警戒が必要です。
特に刺されやすい部位
- 鼻先、唇などの「顔周り」(草むらに顔を突っ込んだ際に狙われやすい)
刺された直後の特徴的な症状
- 刺された瞬間に激しく鳴き叫ぶ
- 数分〜数十分という短時間で、刺された場所がパンパンに腫れ上がる
- 特に顔が大きく腫れて別犬のようになってしまう「ムーンフェイス」と呼ばれる状態になりやすい
2回目以降のアナフィラキシーショックのリスク
- 過去に一度でもハチに刺されたことがある場合、2回目以降はアナフィラキシーショック(命に関わる重篤な全身性アレルギー反応)のリスクが劇的に高まります。
ノミ:しつこい痒みとブツブツ
ノミは驚異的なジャンプ力で体毛に飛び移るため、体の下半分や毛の密度が高い場所に集中して被害が出やすいのが特徴です。
ノミに狙われやすいポイント
- 腰回り
- 尻尾の付け根
- お腹周り
特徴的な症状
- 複数の小さな「赤いブツブツ」ができる
- 猛烈な痒みを伴うため、ワンちゃんが血が出るまで自分の体を激しく掻きむしったり、噛んだりしてしまう
見落とせない二次被害
- 瓜実条虫(サナダムシ)の感染
- 痒くて体を舐めたり噛んだりした際、ノミの体内にいるサナダムシの幼虫をワンちゃんが誤って口から飲み込んでしまうことで、お腹(腸)の中に寄生虫が湧いてしまうリスクがあります。
マダニ:吸血して大きくなる「イボ」
散歩から帰った愛犬の体に、黒く小さな「イボ」のようなものを見つけたら、それはマダニが皮膚に噛みついている可能性があります。
見た目の特徴と変化
- 初期:皮膚に口を差し込み、セメントのような物質でがっちり固定して数ミリ程度の小さな体で吸血を始める
- 吸血後:数日間血を吸い続けると、1cm近くまでパンパンに丸く大きく膨れ上がる
手で引き抜いてはいけない理由
- 頭部が体内に残る:無理に引っ張ると、マダニの頭(口器)だけが犬の皮膚の中にちぎれて残ってしまい、そこから激しく化膿します。
- 病原体を逆流させる:ピンセットなどで胴体をギュッと潰してしまうと、マダニの体内の体液(病原体)が一気に犬の血管へ流れ込んでしまいます。
マダニが媒介する病気のリスク
- バベシア症:赤血球が破壊され、命に関わる重い貧血や黄疸を引き起こす病気。
- SFTS(重症熱性血小板減少症候群):犬だけでなく、人間にも感染して死亡する例が出ている極めて危険なウイルス。
犬が虫に刺されたときの応急処置と正しい対処法

「病院に行くほどではないかも?」と思っても、何もしないのは可哀想ですよね。お家でできる安全なケアと、絶対にやってはいけない注意点をプロの視点でお伝えします。
患部を洗浄して冷やす
手順
水道水の流水で患部を優しく洗い流す
このとき、石鹸を使う場合は低刺激の犬用を選び、ゴシゴシ擦らないように注意しましょう。
保冷剤を薄いタオルやガーゼで巻き、患部にあてて冷やす
冷やすことで血管が収縮し、炎症の広がりや痒み、痛みを和らげることができます。
舐めさせない
ワンちゃんにとって「舐める」ことは本能的な治療行為ですが、虫刺されに関しては症状をさらに悪化させる逆効果の行動になります。
舐めさせることで生じる重大なリスク
- 傷口の化膿:犬の口内には多くの雑菌がいるため、舐めることで細菌感染を起こす
- 皮膚炎への悪化:執拗に舐め続けることで、指の間の炎症である「趾間炎(しかんえん)」や、激しい痒みとジュクジュクを伴う「ホットスポット(急性湿疹)」へ悪化してしまう
対策
- 犬の舌が患部に直接届かないように、物理的な対策をとるのが最も効果的です。
- エリザベスカラーを装着する(あればベスト)
- 清潔な靴下を履かせる(足元を刺された・舐めてしまう場合)
- Tシャツや服を着せる(胴体やお腹周りを刺された場合)
市販の人間用薬の使用は絶対に避けて
ネット上の「人間用の虫刺され薬を犬に塗った」という体験談は非常に危険です。犬と人間では皮膚の厚さも代謝機能も異なるため、市販の人間用薬は絶対に避けてください。
人間用の薬(ムヒやキンカンなど)がNGな理由
- 犬にとっては刺激が強すぎる以下の成分が含まれているため
縫った場所を舐めてしまった時のリスク
- ワンちゃんが薬の塗られた皮膚を舐め、成分を口から摂取してしまうことで、以下のような重篤な薬物中毒を起こす危険があります。
- 嘔吐・下痢
- 神経症状(ふらつき、震え、けいれんなど)
「良かれと思って」したことが愛犬を苦しめる結果にならないよう、薬は必ず動物病院で処方されたものを使用してください。
虫刺されに似た「別の病気」に注意!

実は「虫に刺されたと思っていたら、別の病気だった」という誤解が、皮膚トラブルを長引かせる原因になることがあります。以下の疾患は、見た目が非常に虫刺されに似ています。
肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)
「ただの虫刺されだと思っていたら、実は怖い病気だった」というケースの筆頭が、この肥満細胞腫です。
見た目で油断しがちなこの腫瘍について、その恐ろしいニックネームの理由や、見分けるための重要な特徴、受診の目安を箇条書きでスッキリと整理しました。
肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)
肥満細胞腫は、犬の皮膚に非常によく見られる悪性腫瘍(がん)の一種です。一見すると無害に見えるため、見落とさないための正しい知識が必要です。
肥満細胞腫の特徴
- サイズが変化する:腫瘍からヒスタミンなどの物質が出るため、大きくなったり小さくなったりを繰り返す。
- 触ると赤くなる:しこりを触ったり刺激したりすると、周囲の皮膚が赤くなったり腫れたりする。
病院を受診すべき重要な目安
- 普通の虫刺されであれば、数日から1〜2週間ほどで自然と治っていきます。
- 「1ヶ月経っても消えないしこり」がある場合は、絶対に放置せず、早急に動物病院で細胞検査(針生検)を受けてください。
早期発見できれば、手術で根治できる可能性が高い病気です。
膿皮症(のうひしょう)
膿皮症は、皮膚のバリア機能が低下したことで起こる、犬に非常に多い細菌感染症です。虫刺されと間違えて放置すると、全身に広がってしまうことがあるため注意が必要です。
引き起こされる原因
- 高温多湿、アレルギー、体調不良などによって皮膚のバリア機能が低下する
症状の特徴
- プツプツとした「赤い発疹(ほっしん)」ができる
- 中心が白っぽく「膿(うみ)を持った湿疹」ができる
- 症状が進むと、かさぶたの周囲が丸く剥がれる「表皮小環(ひょうひしょうかん)」というフケのような特徴的な跡がみられます。
- 特にジメジメと湿度の高い「梅雨時から夏にかけて」爆発的に多くなります。
正しい治療法と対策
- 虫に刺されたわけではないため、虫除けや市販の痒み止めでは絶対に治りません。
- 動物病院を受診し、抗生物質(飲み薬や塗り薬)の処方や、細菌を洗い流す薬用シャンプー(シャンプー療法)による適切な治療を行う必要があります。
指間炎(しかんえん)
指間炎は、足の指の間や肉球の隙間の皮膚がポコッと赤く腫れ、強い痒みや痛みを伴う皮膚炎です。歩くときに違和感が出るため、早期の発見と原因追究が大切になります。
発症の主なきっかけ
- お散歩中に小さなトゲやガラス片などを踏んで傷ついた
- 足の指の間を虫に刺された
- 執拗に足の裏を舐めたり噛んだりしてしまう(舐め壊し)
裏に隠れていることがある根本的な原因
- アレルギー:食物アレルギーや環境アレルギー(アトピー)の症状が、一番痒みの出やすい「足の裏」に現れている可能性
- ストレスや退屈:不安、寂しさ、運動不足などのストレスを紛らわせるために、自分の足をずっと舐め続けている可能性
病院へ行くべき「危険なサイン」の判断基準

飼い主さんが一番迷うのは「今すぐ夜間救急に行くべきか、明日まで待っていいか」ですよね。以下のサインは「命に関わる緊急事態」です。迷わず病院へ走ってください。
一刻を争うアナフィラキシー症状
虫に刺されてから数分〜1時間以内に以下の症状が出たら、アナフィラキシーショックの可能性があります。
- 顔がパンパンに腫れ、目が開かない(ムーンフェイス)
- 呼吸が速い、または「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と苦しそうな音がする
- 突然、激しい嘔吐や下痢をした
- 歯茎の色が真っ白、あるいは青紫色になっている(チアノーゼ)
- ぐったりして呼びかけに反応が薄い
これらは全身の血管が拡張し、血圧が急降下しているサインです。放置すると命を落とす危険があるため、診察時間外であっても救急病院へ連絡してください。
「虫に刺されない」ための予防・対策

痛い思いをするのは愛犬です。
飼い主さんができる予防・対策をご紹介します。
予防薬のスケジュールを「通年」にする
フィラリア、ノミ、マダニの予防薬を飲むことを徹底しましょう。最近は温暖化の影響で、冬場でも活動する虫が増えています。「冬だから休薬」ではなく、1年中服薬するほうが安心です。
食べるタイプのお薬なら、おやつ感覚で喜んで食べてくれる子も多いですし、どうしてもお薬が苦手な子には、背中に垂らすスポットタイプもあります。飲み忘れが心配な方は、1回の投与で3ヶ月効果が持続するお薬を獣医さんに相談してみるのも手ですよ。
お散歩スタイルの見直し
「草むら」には虫がいっぱい。特に雨上がりや湿気の多い時期の草むらは、マダニが獲物を待っている絶好のスポット。なるべく舗装された道を選んで歩くのが理想です。
また、防虫効果のある服(ドッグウェア)を着せるのも非常に有効です。物理的に皮膚を隠すことで、蚊やハチから守れます。
最近はクール素材で防虫機能がついたハイテクなウェアもたくさん出ているので、チェックしてみてくださいね。
帰宅後の「全身チェック」をルーティンに
お散歩から帰ったら、すぐに玄関でブラッシングをする習慣をつけましょう。 ただ毛を整えるだけでなく、脇の下、股の間、指の間、耳の裏、尻尾の付け根を指先で確認してください。
マダニが吸血してパンパンになる前に見つけることができれば、感染症のリスクを最小限に抑えられます。
まとめ:愛犬の「いつもと違う」を見逃さないで
犬が虫に刺された時のチェックポイントから、お家でできる応急処置、さらには「虫刺されに見えるけれど実は怖い病気」まで、飼い主さんが知っておくべき情報を網羅して解説しました。ポイントを振り返りましょう。
- ハチやノミ・マダニなど虫ごとに症状が異なり、特にマダニは病原体の逆流を防ぐため「無理に手で引き抜かない」のが鉄則
- 虫に刺された際は「流水での洗浄」と「保冷剤での冷却」が基本。雑菌が入るため舐めさせず、人間用の薬は中毒リスクがあるため絶対に使わない
- ただの虫刺されに見えても、サイズが変わるしこり(肥満細胞腫)や、細菌感染(膿皮症)、アレルギー等の別の病気が隠れていることもある
- 顔がパンパンに腫れる、ゼーゼーと息が荒い、激しい嘔吐やぐったりする症状は「アナフィラキシー」の危険があるため、迷わず直ちに救急受診する
- 予防薬の通年投与、草むらを避ける散歩ルート、防虫ウェアの着用、帰宅後の入念な全身チェックで愛犬を虫から守る
ワンちゃんの皮膚にポコッとした腫れを見つけると、誰だって焦ります。「ただの虫刺されかな?」と迷ったときは、スマホで患部の写真を撮っておくと、病院での診断がとてもスムーズになりますよ。
愛犬の「いつもと違う」を見逃さずに、楽しいお散歩ライフを過ごしてくださいね。
著者
DogLife編集部



