旅行先で犬が興奮しすぎるときの落ち着かせる方法と事前にできる対策
旅行先で犬が興奮しすぎて落ち着かない原因と対策を解説。事前のトレーニング方法から当日の対処法、興奮しにくい旅行プランの立て方まで具体的にお伝えします。

旅行先で犬が興奮しすぎて手がつけられない――犬連れ旅行でよくある悩みの一つですよね。宿に着いた途端に走り回る、他の犬や人に飛びつく、鳴き続けて落ち着かない。飼い主さんは「楽しんでくれてるのかも」と思いつつも、周囲への迷惑や犬の体調が心配になります。
犬が旅行先で興奮するのは自然な反応です。いつもと違う環境、新しい匂い、見慣れない景色――犬の五感はフル稼働状態になり、テンションが上がってしまいます。ただ、興奮が長く続くと犬の体力も消耗しますし、部屋からの飛び出しや他の犬とのトラブルにもつながります。
この記事では、犬が旅行先で興奮しすぎる原因を整理して、事前のトレーニングから当日の対処法まで、具体的な落ち着かせ方をご紹介します。興奮は「性格だから仕方ない」で終わる話ではなく、宿の選び方や到着後の過ごし方を変えるだけでも落ち着き具合は変わります。旅行の1〜2ヶ月前から準備できることも多いので、順番に見ていきましょう。
犬が旅行先で興奮しすぎるのはなぜ?
興奮への対策は原因の理解から始まります。犬がなぜ旅先でテンションが上がりすぎるのか、その仕組みがわかると対処の方向性が見えてきますよ。ここでは主な原因を解説します。
初めての環境で刺激が多すぎる
犬の嗅覚は人間と比べものになりません。科学技術振興機構(JST)が2014年に発表した東京大学の比較ゲノム研究(掲載誌はGenome Research)では、においを受け取る嗅覚受容体遺伝子のうち機能するものの数が、犬で約1,000個、人で約400個と報告されました。どのくらい薄いにおいまで嗅ぎ分けられるかは物質によって差が大きいので「人の何万倍」と一律には言えませんが、人が何も感じない部屋でも犬は大量の情報を受け取っています。初めての場所、初めての匂い、初めての音――これらの新しい刺激が一気に押し寄せると、犬の脳は処理しきれなくなり、興奮状態に陥ります。
特にチェックインしてすぐの30分ほどは、部屋の隅々まで匂いを嗅ぎ回り、家具やソファのニオイをチェックする動きが止まりません。これは犬が自分の身を置く場所を確かめている自然な探索行動なので、無理に止めなくて大丈夫です。リードをつけたまま犬のペースで一周させて、部屋の全体を把握させてあげましょう。逆にこの時間を飛ばして観光に出ると、宿に戻ってからまた探索がはじまり、就寝時間まで落ち着かないことがあります。到着直後の30分は「部屋に慣れる時間」として最初からスケジュールに組み込んでおくのがおすすめです。
日常のリズムが崩れている
犬はルーティン(日課)を好む動物です。食事の時間、散歩の時間、寝る場所が変わると不安を感じ、それが興奮という形で表れます。
できるだけ家のリズムを旅行先でも再現してみましょう。起床と朝の散歩、食事、就寝の時間をいつもと同じにするだけで、犬の落ち着き具合は変わってきます。フードも普段と同じものを持参して、旅先だからと特別なおやつを増やさないほうがよいでしょう。家のニオイがついたブランケットを持参して犬の寝床に敷いておくのも安心材料になりますよ。
旅行中はどうしても自宅の生活と違う部分が出てきますが、「食事」「寝床」「就寝時間」の3つを守るとストレスも最小限にできます。
興奮しやすい犬種はある?
犬種によって興奮しやすさには差があります。
- ジャックラッセルテリア: エネルギーレベルが非常に高い
- ボーダーコリー: 知的好奇心が強く、新しい環境に反応しやすい
- ラブラドールレトリバー: フレンドリーで人や犬に興奮しやすい
- 柴犬: 環境の変化に敏感で警戒心から興奮する場合がある
- ダックスフンド: 猟犬気質で匂いに強く反応する
もっとも、犬種は目安にすぎません。同じ犬種でも個体差が大きいので、愛犬がどのタイプに近いかは普段の散歩の様子から判断してください。
共通して言えるのは、運動欲求の強い犬種は運動不足のまま旅行に行くと興奮が増幅するということ。旅行前の1週間は意識的に散歩や遊びの時間を増やし、当日の朝もいつもより長めに歩いてから車に乗せましょう。
逆に警戒心から興奮するタイプの犬は、運動よりも「刺激の少ない宿を選ぶ」ほうがおすすめです。
飼い主の興奮が犬に伝わる
「旅行だ!楽しみ!」という飼い主のハイテンションが犬に伝わっている側面もあります。犬は飼い主の感情を敏感に読み取るので、飼い主が落ち着いていると犬も落ち着きます。
特に出発前のバタバタした準備時間や、宿到着時の「やった〜!」という反応が、犬の興奮スイッチを入れる原因になります。荷造りは犬が見ていない前日までに終わらせて、当日の朝は普段の休日と同じテンションで過ごしましょう。宿に着いたときも、声のトーンを上げずに淡々と荷物を運び、犬に構いすぎないようにします。写真を撮りたくなるタイミングですが、犬が落ち着いてからのほうが良い表情が撮れますよ。飼い主が先にソファに座ってのんびりしている姿を見せると、犬も「ここは休む場所だ」と理解できます。
運動不足でエネルギーが余っている
普段の運動量が足りていない犬は、旅先で自由になった途端に溜まったエネルギーを爆発的に発散しようとします。
一般的に1回の散歩時間は小型犬で20〜30分、中型犬で30分、大型犬で60分、これを朝夕の1日2回。距離にすると小型犬が1日2〜4km、中型犬・大型犬が4〜8kmです。
テリア系やコリー系のように活動量の多い犬種は、この上限側で考えておくと足ります。旅行中は移動時間が長くなる分、運動時間も意識的に確保しましょう。
出発前日と当日朝の散歩をいつもより長めにするだけで、宿での興奮を抑えることができます。移動が2時間を超える場合は、サービスエリアや道の駅で10〜15分歩かせる休憩を挟んでください。宿に着いてからも、部屋に入る前に周辺を一周散歩させると、探索欲求がある程度満たされて部屋での暴走を減らせますよ。
旅行前にできる興奮対策トレーニング
旅先での興奮を抑えるには、トレーニングが効果的です。ここでは実践的なトレーニング方法をお伝えします。
「マット」トレーニングで落ち着く場所を作る
特定の場所(マットやブランケット)で落ち着いて伏せる練習は、旅先でも応用できるトレーニングです。
やり方
- 犬用のマットやブランケットを用意する
- マットの上に犬を誘導し、「マット」と指示する
- マットの上で伏せたら、おやつを与えて褒める
- 徐々にマットの上にいる時間を延ばす
- 自宅の色々な場所でマットを使って練習する
旅先にこのマットを持参すれば、「ここに伏せれば落ち着く場所」と犬が認識してくれます。練習期間は最低2週間、毎日5〜10分程度を2〜3回繰り返すとよいでしょう。
マットは厚手で滑りにくい素材を選び、自宅でも食事や就寝の場所として使って習慣づけてくださいね。
「落ち着いたら褒める」を習慣にする
日常から「興奮していないとき」を褒める習慣をつけましょう。
- 散歩中に他の犬を見てスルーできたとき→褒める
- 来客があっても吠えずにいられたとき→褒める
- 何もせずにリラックスしているとき→褒める
「落ち着いていること=良いこと」と犬が学習すれば、旅先でも落ち着くことができますよ。1日5〜10回、「いいこ」「えらいね」と落ち着いたトーンで褒めるだけで十分です。
声を張り上げて褒めると、それ自体が興奮のきっかけになるので、気をつけてくださいね。
注意したいのは、興奮している犬に「どうしたの〜!」と声をかけてしまうことです。犬にとってはご褒美になり、興奮が強化されてしまいます。
旅行前に「初めての場所」で練習する
旅行前に、普段行かない場所に連れていく練習をしておきましょう。
- 初めてのドッグカフェに行く
- 違う公園で散歩する
- 友人の家に遊びに行く
- 車で知らない場所に行って散歩する
環境が変わることへの耐性がつくと、旅行先でも落ち着いていられます。
出発前にしっかり運動させる
旅行当日の朝、出発前にしっかり運動させましょう。
- いつもより長めの散歩(30分〜1時間)
- ボール遊びやフリスビーで体力を発散
- 知育トイでの頭の運動も効果的
体力とエネルギーをある程度消耗させた状態で車に乗せると、移動中に寝てくれる確率が上がります。早朝に長めの散歩をして、出発時には犬が満足して疲れている状態を作っておきましょう。
ドッグランで30〜60分走らせるのも有効ですが、興奮したまま車に乗せると移動中も落ち着かないので、適度なところで切り上げてください。
旅行当日の興奮を落ち着かせるテクニック
事前トレーニングをしていても、旅先で興奮してしまう場面はあります。そんなときに使える即効性のあるテクニックをご紹介します。
宿に着いたらどうすればいい?
宿に到着したら、まずは犬を落ち着かせることを最優先にしましょう。
- 部屋に入ったらリードをつけたまま: すぐにフリーにしない
- ゆっくり部屋を探索させる: リードをつけた状態で、犬のペースで匂いを嗅がせる
- マットを敷いてルーティンを再現: 普段使っているブランケットやマットで「ここが落ち着く場所」を作る
- おやつやガムを与える: 噛む行為は犬をリラックスさせます
- 飼い主自身がリラックスする: ソファに座ってのんびり過ごす姿を見せる
最初の30分はリードをつけたまま様子を見て、犬が落ち着いてからフリーにすると、家具を引っ掻いたりマーキングしたりするのを防げます。
おやつを詰められる知育トイを渡すと、犬が食べることに集中して落ち着くまでの時間が早まります。定番はコングジャパンのゴム製トイ「コング」で、内側の空洞に専用ペーストやフードを詰めて使います。Sサイズが600円台、Mサイズが1,700円前後(2026年7月時点の通販価格)で、旅行用にひとつ足すだけなら負担も小さいですよ。
部屋に入るなり吠え続けたりソファに飛び乗ったりする場合は、いったん外に出て5分散歩してあげてください。
興奮しているときの対処法
犬が興奮しているときの具体的な対処法です。
やるべきこと
- 低い声でゆっくり「オスワリ」「フセ」のコマンド
- 犬の視線を自分に向けて、アイコンタクトを取る
- その場を離れて静かな場所に移動する
- 深呼吸して飼い主自身が落ち着く
やってはいけないこと
- 大声で「ダメ!」と叱る(犬はさらに興奮します)
- 犬を追いかけ回す(遊びと勘違いしてさらにテンションアップ)
- 興奮している犬をなだめるように撫で続ける(興奮を強化してしまいます)
- 力ずくで押さえつける(犬との信頼関係が崩れます)
コマンドは普段使い慣れた言葉で、トーンを下げてゆっくり発音してください。「待て」「フセ」など、犬が確実に従える簡単なものを使い、できたらすぐにおやつで褒めます。
ここで注意したいのは、コマンドを連呼しないこと。何度も繰り返すと犬は言葉を聞き流すようになります。
クールダウンのためのタイムアウト
興奮がどうしても収まらない場合は、「タイムアウト」が有効です。
- 犬をクレートや別室に入れる(罰としてではなく、クールダウンのため)
- 5〜10分、刺激のない静かな環境で過ごさせる
- 落ち着いたら出して、穏やかに接する
タイムアウトは犬を罰する方法ではなく、過剰な刺激から犬を守るための方法です。落ち着いて過ごせたことをきちんと褒めてあげてくださいね。
ここで大事なのは、クレートが「罰の場所」にならないようにすること。普段からクレートの中でおやつを与えたり、寝る場所として使ったりして、犬にとって安心できる場所にしておきましょう。
旅行先で犬が興奮しすぎるときのよくある質問(FAQ)
旅行先で犬が興奮しすぎるときのよくある質問について回答します。
旅行先で犬が一晩中興奮して寝ないのですが、どうすればいいですか?
環境の変化による一時的なものである場合が多いです。いつものブランケットやクレートで安心できる空間を作り、部屋を暗くして静かに過ごしましょう。
出発前に十分に運動させておくこと、到着後にも散歩で体力を使わせることが有効です。2泊目以降は慣れて眠れるようになるケースも多いので、初日だけで判断しないようにしてください。
興奮しやすい犬種は旅行に向いていないのでしょうか?
犬種によってエネルギーレベルは異なりますが、「旅行に向かない犬種」というものはありません。大切なのは犬種の特性を理解した上で、その子に合った旅行スタイルを選ぶことです。
ジャックラッセルテリア、ボーダーコリー、ハスキーなど活動量の多い犬種は、ドッグラン併設の宿、湖でのアクティビティ、長めのハイキングコースなど、体力を使える旅行先と相性が良いです。
一方、トイプードルやチワワなどの小型犬は、ゆったりとしたリゾート滞在型の旅行が向いています。犬種ではなく「うちの子はどれだけ動きたいか」を基準にプランを組むことがおすすめです。
興奮しすぎる犬に薬を使うことはありますか?
旅行時の一時的な興奮そのものに薬を出す使い方は一般的ではありません。分離不安や極度の恐怖など、日常的に強い不安行動がある場合は、行動療法と併せて薬物療法が検討されます。
まとめ
旅行先での犬の興奮は、事前の準備と当日の対処のしかたで大きく変わります。原因は環境の変化とエネルギーの発散不足がほとんどです。
ポイント💡
- 興奮の原因を知る(環境の変化、いつものリズムの崩れ、運動不足)
- 「マット」トレーニングと「落ち着いたら褒める」習慣を旅行前から始める
- 出発前にしっかり運動させてから車に乗せる
- 宿に着いたらリードをつけたまま30分かけて部屋に慣らす
- 興奮中は大声で叱らず、低い声でコマンドを出す
- 一棟貸しや部屋食など、刺激の少ないプランを選ぶ
犬の興奮は「楽しい!」という気持ちの表れでもあります。それ自体は悪いことではありません。ただ、興奮が続くと犬も疲れてしまうので、落ち着ける時間をこちらから用意してあげましょう。まずは日帰りのお出かけや近場の1泊から練習してみてくださいね。
著者
DogLife編集部
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