03 April.
老犬がご飯食べないのに水は飲む?原因と対処法を詳しく解説
老犬がご飯を食べないのに水は飲む原因(歯の痛み・内臓疾患・認知症・食欲低下)、すぐ受診すべきケース、食べさせる工夫を詳しく解説。シニア犬の食欲不振に悩む飼い主さん必見。

「うちの愛犬、最近ご飯を食べなくなったのに水だけはよく飲む…」
——シニア犬と暮らす飼い主さんにとって、愛犬の食欲低下は大きな心配事です。特に「水は飲むのにご飯は食べない」という状態が続くと、「何かの病気のサイン?」「このまま弱ってしまうのでは?」と不安が尽きないですよね。
老犬が食欲を失う原因は実にさまざまです。加齢による自然な変化の場合もあれば、歯の痛み、内臓の疾患、認知症の進行など、医療的なケアが必要なケースもあります。「水は飲む」という行為自体にも、重要な健康情報が隠されていることがあります。
この記事では、老犬がご飯を食べないのに水を飲む原因を一つひとつ詳しく解説し、すぐに動物病院を受診すべき危険なサイン、そして自宅でできる食べさせる工夫まで説明します。
老犬がご飯を食べないのに水は飲む原因
老犬が食べなくなる背景には、さまざまな原因が隠れています。ここでは考えられる主な原因を一つひとつ解説しますので、愛犬の状態と照らし合わせてみてください。
原因1:口腔内のトラブル(歯周病・歯の痛み)
老犬がご飯を食べない最も多い原因の一つが、口の中の痛みです。特に中高齢の犬では歯周病の罹患率が非常に高く、3歳以上の犬の約80%が何らかの歯周病を抱えているとされています。
歯周病が進行すると以下のような状態になります。
- 歯がグラグラする:噛むたびに痛みが走り、硬いフードを食べられなくなります
- 歯茎が腫れている・出血する:炎症による痛みで食事を避けるようになります
- 歯槽膿漏:歯の根元に膿がたまり、激しい痛みを引き起こします
- 歯の破折:割れた歯の断面が神経を刺激し、強い痛みが出ます
水は痛みなく飲めるため、「ご飯は食べないけど水は飲む」という状態になりやすいのです。口臭が以前より強くなった、片側でしか噛まない、食べようとして途中でやめるなどのサインがあれば、口腔トラブルを疑いましょう。
原因2:内臓疾患(腎臓病・肝臓病・腫瘍など)
老犬の食欲低下で特に注意が必要なのが、内臓の病気です。「水は飲むのにご飯を食べない」という状態は、以下の病気のサインであることがあります。
腎臓病(慢性腎不全)
老犬に非常に多い病気です。腎機能が低下すると体内の毒素をうまく排出できなくなり、吐き気や食欲不振が起こります。一方で、腎臓が尿を濃縮する能力が落ちるため多飲多尿(水をたくさん飲み、おしっこの量が増える)が特徴的な症状として現れます。
肝臓病
肝臓の機能低下により、代謝異常や毒素の蓄積が起こり、食欲が低下します。進行すると黄疸(白目や歯茎が黄色くなる)が見られることもあります。
糖尿病
インスリンの分泌や作用に問題が生じ、血糖値のコントロールができなくなります。多飲多尿・食欲低下・体重減少が典型的な症状です。
腫瘍(がん)
消化器系の腫瘍や体内の腫瘍が進行すると、痛みや吐き気から食欲が低下します。腫瘍の種類によっては多飲の症状が伴うこともあります。
子宮蓄膿症(未避妊のメス犬)
子宮に膿がたまる病気で、多飲多尿・食欲不振・嘔吐などの症状が現れます。放置すると命に関わるため、緊急の受診が必要です。
原因3:認知機能の低下(認知症)
犬にも人間と同じように認知症(認知機能不全症候群:CDS)が起こります。特に11歳以上の犬で発症率が高くなり、以下のような症状が見られます。
- 食事の仕方が変わる:食べ物の前に来ても何をしていいかわからないような様子
- 昼夜逆転:夜中に起きて徘徊し、昼間に寝ている
- 飼い主を認識できないことがある
- 同じ場所をぐるぐる回る
- トイレの失敗が増える
- ぼんやりしている時間が増える
認知症の犬は食欲のリズムが乱れ、ご飯の時間を認識できなかったり、食べ物を食べ物として認識できなくなることがあります。一方で、喉の渇きは本能的に感じやすいため、水は飲むという状態になることがあります。
原因4:加齢による自然な食欲低下
病気がなくても、老犬は加齢に伴って自然に食欲が低下することがあります。
- 基礎代謝の低下:運動量の減少とともに必要なエネルギー量が減り、若い頃ほど食べなくなるのは自然なこと
- 嗅覚・味覚の低下:食べ物のにおいを感じにくくなり、食への興味が薄れます
- 筋力の低下:首を下げてフードボウルから食べる姿勢がつらくなり、食事を避ける
- 消化機能の低下:胃腸の働きが弱まり、一度に多くの量を食べられなくなる
この場合、急激な食欲低下ではなく、数週間〜数ヶ月かけてゆっくりと食べる量が減っていくのが特徴です。
原因5:薬の副作用やストレス
何らかの治療のために服用している薬の副作用で食欲が低下することもあります。特に以下の薬は食欲に影響しやすいです。
- 抗生物質
- 消炎鎮痛剤(NSAIDs)
- 抗がん剤
- 心臓の薬
また、環境の変化(引っ越し、家族の入退院、新しいペットの迎え入れなど)によるストレスで食欲が落ちることもあります。
すぐに動物病院を受診すべき危険なサイン
老犬の食欲低下は、中には一刻を争うケースもあります。「様子見で大丈夫か」「すぐに病院に行くべきか」の判断基準をしっかり確認しておきましょう。
緊急性が高いケース
以下の症状が見られた場合は、できるだけ早く(当日中に)動物病院を受診してください。
- 24時間以上まったく何も食べない:老犬は体力の予備が少ないため、若い犬よりも早く危険な状態に陥る可能性があります
- 水も飲まなくなった:脱水が急速に進行し、命に関わります
- 嘔吐を繰り返す:食べられないだけでなく吐く場合は、消化器系の緊急疾患の可能性
- 下痢が続く:嘔吐と下痢が同時にある場合は脱水のリスクが非常に高い
- ぐったりして動かない:意識レベルの低下は深刻な状態のサイン
- お腹が膨らんでいる:腹水や胃拡張・胃捻転の可能性
- 歯茎の色が白い・紫色:貧血やショック状態の兆候
- 急に水を大量に飲むようになった:腎不全や糖尿病、子宮蓄膿症などの可能性
早めの受診をおすすめするケース
緊急ではないものの、以下の状態が2〜3日以上続く場合は受診をおすすめします。
- 食べる量がいつもの半分以下に減った
- 好きだったおやつにも興味を示さない
- 体重が目に見えて減ってきた
- 口臭がきつくなった
- 食べようとするが途中でやめる
- 食後に吐くことが増えた
受診時に伝えるべき情報
動物病院を受診する際は、以下の情報をメモしておくとスムーズです。
- いつから食べなくなったか
- 水の飲む量に変化はあるか(増えた・変わらない・減った)
- 排泄の状態(おしっこの量・回数・色、便の状態)
- 嘔吐や下痢の有無
- 現在服用中の薬
- 最近の環境変化の有無
- 普段の食事内容
老犬にご飯を食べてもらう工夫

病気以外の原因で食欲が落ちている場合は、ちょっとした工夫で食べてくれるようになることがあります。自宅ですぐに試せる方法を紹介しますので、ぜひ取り入れてみてください。
フードの温め・トッピング
老犬の食欲を刺激するために最も手軽で効果的な方法が、フードを温めて香りを立たせることです。
- ドライフードをぬるま湯でふやかす:硬いフードが食べにくくなった老犬に最適。30〜40℃のぬるま湯を加えて15〜20分置くとふやけます
- 電子レンジで10〜20秒温める:ウェットフードの場合、軽く温めるだけで香りが格段に強くなります。熱すぎないか確認してから与えてください
- 鶏ささみの茹で汁をかける:塩分を加えず茹でた鶏ささみの汁は、嗜好性が高くおすすめです
- トッピングを追加する:茹でた鶏ささみ、茹でた野菜(さつまいも、かぼちゃなど)、ヤギミルクなどを少量トッピングすると食いつきが改善することがあります
フードの種類を変える
今のフードに飽きていたり、食べにくくなっている可能性がある場合は、フードの種類を見直しましょう。
- ドライフードからウェットフードへ:水分量が多く、香りも強いウェットフードは老犬の食欲を引き出しやすい
- シニア犬用フードに切り替える:消化しやすく、必要な栄養素が調整されたシニア犬用フードを選びましょう
- 手作り食の導入:茹でた鶏肉、白身魚、おかゆなどを手作りで用意する方法もあります。ただし栄養バランスに注意が必要なので、獣医師に相談しながら進めましょう
- 流動食・介護食:固形物が食べられなくなった場合は、シリンジで流動食を与える方法もあります
食事環境の改善
食べたい気持ちはあるのに、食事の姿勢がつらくて食べないというケースは意外と多いです。
- 食器台(フードスタンド)を使う:食器を高い位置に設置することで、首を大きく下げなくても食べられるようになります。高さは犬の肘の位置が目安です
- 滑り止めマットを敷く:足が滑ると踏ん張れず食べにくいので、滑り止めマットの上で食事させましょう
- 食事の回数を増やす:1日2回を3〜4回に分け、1回の量を減らすことで消化の負担を軽減できます
- 手から食べさせる:食器からは食べないのに、飼い主の手からなら食べるという犬もいます。スキンシップにもなるので試してみてください
適度な運動で食欲を促す
老犬でも無理のない範囲で体を動かすことは、食欲改善に効果的です。
- 短い散歩を1日数回:長時間の散歩ではなく、5〜10分程度の短い散歩を複数回行う
- 室内での軽いストレッチ:関節を優しく動かしてあげるだけでも血行が良くなります
- 嗅覚を使う遊び:おやつを部屋に隠して探させる「ノーズワーク」は、脳の刺激にもなり食欲を促進します
老犬が「水をよく飲む」ことの意味
「ご飯は食べないけど水は飲む」という状態では、水の飲み方にも注目しましょう。
多飲多尿は病気のサイン
「水は飲む」という行動自体にも注目する必要があります。特に、いつもより明らかに水を飲む量が増えた場合は、以下の病気が疑われます。
病気 | 主な症状 |
|---|---|
慢性腎不全 | 多飲多尿、食欲低下、体重減少、嘔吐 |
糖尿病 | 多飲多尿、食欲低下または亢進、体重減少 |
クッシング症候群 | 多飲多尿、お腹の膨れ、皮膚トラブル |
子宮蓄膿症 | 多飲多尿、食欲不振、陰部からの分泌物 |
高カルシウム血症 | 多飲多尿、食欲不振、元気消失 |
水の飲む量の目安
犬の1日の正常な飲水量の目安は、体重1kgあたり約50〜60mlです。
- 体重5kgの犬:250〜300ml/日
- 体重10kgの犬:500〜600ml/日
- 体重20kgの犬:1000〜1200ml/日
これを大幅に超える(体重1kgあたり100ml以上)場合は「多飲」と判断されます。正確に測るには、1日の始めに水の量を計量して入れ、翌日に残量を測る方法が簡便です。
脱水のチェック方法
老犬が食べないとき、脱水していないかのチェックも重要です。
- 皮膚の弾力テスト:犬の肩甲骨あたりの皮膚をつまんで持ち上げ、離したときにすぐ元に戻れば正常。戻りが遅い場合は脱水の可能性
- 歯茎の色と湿り具合:歯茎がピンク色で湿っていれば正常。白っぽかったり、乾燥している場合は脱水の疑い
- 目が落ちくぼんでいる:脱水が進むと目がくぼんで見えることがあります
老犬の「水をよく飲む」ことに関するよくある質問(FAQ)
老犬の食欲低下について、飼い主さんから多く寄せられる質問をまとめました。
Q1: 老犬がご飯を食べないのは余命が近いサインですか?
A: 老犬の食欲低下は必ずしも余命が近いことを意味しません。歯の問題や一時的な体調不良、環境変化など、治療や対処で改善できる原因であることも多いです。ただし、水も飲まなくなり、どんな工夫をしても何も口にしない状態が続く場合は、体の機能が全体的に低下している可能性があります。まずは獣医師に相談し、原因を特定することが大切です。
Q2: 老犬が何日食べなかったら病院に行くべきですか?
A: 老犬の場合は、24時間(1日)以上まったく食べない場合は受診を検討してください。若い犬であれば2〜3日様子を見ても大丈夫なことがありますが、老犬は体力の予備が少なく、脱水や低血糖のリスクが高いため、早めの対応が重要です。特に水も飲まない、嘔吐がある、ぐったりしているなどの症状がある場合はすぐに受診しましょう。
Q3: フードを温めても食べてくれません。他にできることはありますか?
A: フードの温めで改善しない場合は、以下を試してみてください。茹でた鶏ささみやチーズなど嗜好性の高い食材を少量手から与えてみる、食器の高さを変える(フードスタンドの使用)、食事の回数を増やして1回の量を減らす、ウェットフードやペースト状の流動食に切り替える、食事の場所を変えてみる、などが効果的な場合があります。
それでも食べない場合は、口腔内の痛みや内臓の問題が隠れている可能性があるため、獣医師への相談をおすすめします。
Q4: 老犬に強制的にご飯を食べさせてもいいですか?
A: 無理やり口に食べ物を押し込むのは、誤嚥(食べ物が気管に入ること)のリスクがあるため避けてください。
ただし、獣医師の指導のもとでシリンジ(針のない注射器)を使って流動食を与える「シリンジフィーディング」は、食事ができない犬への栄養補給として一般的に行われています。自己判断ではなく、必ず獣医師の指導を受けてから行いましょう。
Q5: 老犬の食欲低下を予防する方法はありますか?
A: 完全な予防は難しいですが、以下の習慣が食欲維持に役立ちます。
定期的な歯科検診(年1〜2回)で口腔トラブルを早期発見する、年齢に合ったフードに適切な時期に切り替える、無理のない範囲で毎日の散歩を続ける、定期的な健康診断(シニア犬は年2回推奨)で病気を早期発見する、などです。日頃から食事の様子を観察し、変化があれば早めに対応することが大切です。
まとめ
老犬がご飯を食べないのに水は飲む原因は、口腔トラブル、内臓疾患(腎臓病・糖尿病など)、認知症、加齢による自然な変化、薬の副作用など多岐にわたります。
「水をよく飲む」こと自体が病気のサインの場合があり、特に飲水量が急に増えた場合は腎臓病や糖尿病を疑い、早めに受診することが大切です。
著者
DogLife編集部

